
土壌微生物と生命のつながり
〜食と健康を支える見えない力〜
土壌には様々な微生物が生息しています。1グラムの土には、人の腸内細菌をはるかに超える数百億もの微生物が住んでおり、その大半は人体に無害です。
土壌微生物の働きにより、土の粒子は団粒構造を形成します。この構造により、水はけが良くなり、肥料分が適切に保持され、粒子間に適度な隙間が生まれ、植物の根はその隙間を通って成長できます。植物の根から分泌される物質は土壌微生物の栄養となり、活性化した微生物は植物に必要な養分を作り出して供給することで、植物の成長を支えています。
この土壌微生物と植物の関係は、それだけにとどまりません。
たとえば、いちごの甘く爽やかな香りは、共生する微生物が生み出していることが判明しています。昔ながらの土壌で育ついちごは、香り豊かで保存性も高いのです。
ワインの品質を決定づけるテロワールもその一例です。特定の地域や固有のブドウ畑から造られるワインの個性は、気候や土壌の性質だけでなく、土壌微生物の種類が大きく関与していることがわかっています。カリフォルニアでは、微生物の導入による土壌改良でワインの品質を向上させるビジネスも展開されています。
歴史的に医療は感染症との闘いであったため、微生物や菌類というと病原性を連想しがちですが、実は微生物の働きは地球上のすべての生命に恩恵をもたらしていたのですね。