甘口辛口「譲れないもの」
先日、札幌のタクシーで、昔ながらの生ジンギスカンの店を教えてもらいました。
道産子は肉といったら小さい頃から、ジンギスカンか豚肉。北海道では、すき焼きは豚肉だそうです。
タクシーの運転手さんが面白い話をしてくれました。自分は北海道出身だけど、奥さんは広島県出身なのでジンギスカンを食べない。家族で食べに行くことはないので自分が食べたいときは、もっぱら仲間内との外食。奥さんの好物はもちろん広島焼きで、必ず家で作って食べる。二人とも、YOSAKOIソーラン祭りはどうにも好きになれない、というのです。
10年ほど前、全国でジンギスカンがブームになりました。札幌にもたくさんの店ができましたが、2年と続かず消えていきました。何故なら、地元の人はジンギスカンは家で食べるからだそうです。
どうしても譲れないものがあるとしたら、子供の頃から慣れ親しんだ味であり、習慣なのでしょう。B級グルメが騒がれていますが本当に大切な事は、その土地の物をその土地の人が誇りをもって食べ続けることだと思うのです。
新潟日報「甘口辛口」連載(2011年)