甘口辛口「ブラジルと珈琲」
サンパウロからブラジル中央部のゴイアニアヘ向かうハイウェイを16時間。
道の両側にはサトウキビやコーヒーの畑がどこまでも続き、牧草地には牛がのんびりと放牧されていました。街のそこかしこに大きなマンゴーの木があり、その下には熟したマンゴーが転がっています。
どの家の庭にも、バナナやアセロラの木がありました。
桁違いに豊かな自然の中で、時間がゆっくりと流れていきます。
地元の方と珈琲を飲んだ時「日本人は歩くのが早くて、珈琲をチビチビ飲むね。ブラジル人はゆっくり歩いて、珈琲は熱くて美味しいうちに早く飲むよ」と少し皮肉交じりの言葉に、生き方のヒントを教えてもらったような気がします。
ブラジルの珈琲には必ず砂糖が入っていて、ブラックが好きな私ですが、帰る頃にはすっかり砂糖入り珈琲が癖になっていました。精製していない砂糖の自然な甘さが気に入って土産に買いました。
今も珈琲にこの砂糖を入れて飲むたびに、どこまでもつづく大地と空、陽気な人々の笑顔、そしてあの時の言葉を思い出しています。
新潟日報「甘口辛口」連載(2011年)